media arts lab + SCU

制作主体

ポスター展形式による社会的マイノリティの排除と包摂の表現 ファンタジーとメディアの分析を通じて

研究の要旨

論文の要旨の詳細については、下のファイルをご覧ください!

添付資料

要旨をさらに要約すると、私の研究制作は
「現代社会における社会的マイノリティに関するメディア表現の問題点について、ハリー・ポッターのようなファンタジー作品の表現手法を参考に、架空の存在である人狼を題材にしたポスターの制作を通じて表現した」
というものである、ということです。

作品について

展示制作は「人狼になる人が続出した2030年以降の架空の日本」において開催された「日本に在中する人狼の社会的排除や包摂の歴史をポスターを通じて振り返る目的で2040年代に架空の展覧会」という設定の作品です。
架空の未来の日本の、架空の社会的マイノリティを題材にした架空のポスター展というわけです。

人狼が登場してからの10年間を、2030年代初期、2030年代中期、2030年代後期、2040年代の4つのフェーズに分けて、現実社会における社会的マイノリティの問題とリンクしたポスターを制作しました。

以下はそんなポスターの設定の説明です。

2030年代初期のポスター

この時期は、人狼について当事者以外が、その存在をよく理解していないものの、「家出症」と称して、正体不明の奇病が流行しているとして恐れていたという設定です。 この時期のポスターは、病気を発端とする偏見や差別を、「擬似科学」、「霊感商法」で表現しています。

  • 左利きは家出症になりやすいというデマが広まったことで制作されたポスター
  • 奇病にパニックになる社会に乗じる霊感商法のポスター
  • 家出症にはお酢が効くというデマで、価格高騰した穀物酢のチラシ
  • 湿性耳垢は家出症になりやすいというデマを利用した似非科学の治療法を宣伝するポスター

2030年代中期のポスター

この時期では、人狼の存在が日本社会について認知されるに連れて、人狼が露骨な
差別の対象となっているという設定です。
この年代のポスターでは、日本における社会的マイノリティが遭遇する暴力や誹謗
中傷について表現しています。

  • 満月の夜に災害の際に人狼が暴力の対象になったことを受けて発行された、「満月の夜に狼に変身した状態の人狼」を識別するためのIDマークを周知するポスター。
  • 人狼へのヘイトスピーチ的記事を掲載する架空の保守系雑誌の中吊り広告ポスター
  • 人狼へのヘイト活動を行う団体のポスター

2030年代後期のポスター

  • 人狼が主人公の架空の映画「Passing(Or JobInterview with the Werewolf)」のポスター
  • 「Passing(Or JobInterview with the Werewolf)」の日本版のポスター。
  • ステレオタプな人狼の身体的特徴を再現するメイク記事を掲載したメイク雑誌のポスター
  • ボウカンのイメージに人狼を使った公園のポスター

この時期になると、人狼に対する露骨な差別は少なくなるものの、人狼に対する偏
見は社会に広く残ったままであるという設定である。差別や排除が、故意に差別しよ
うとする人のみによるものだけではなく、悪意の無い人によっても行われることがあ
るということを表現している。

2040年代のポスター

  • チョコレートを食べられない人狼も楽しめる、百貨店主催の「チョコレート以外のお菓子のバレンタインのイベント」のポスター
  • 人狼が主体となって結成した政治政党「民狼党」のポスター
  • 人狼を讃えるパレードの主催を告知する手作りポスター

2040年代に入ると、人狼に関する人権意識が高まり、社会にも変化が起きます。差別
や偏見を広めることもあるポスターで、社会に起こる良い変化を知らせるのもポスターであるという希望を示したいと考えました。

展示

展示にはポスター以外に作品解説のキャプションや、人狼を取り巻く架空の未来の日本の状況を伝える架空の新聞を制作しました。

  • メイク雑誌のポスターのキャプション
  • 2030年代後期の架空の新聞の投書

展示風景の記録