media arts lab + SCU

論文主体

「理想の暮らし」にみるそれぞれの「観」 ぼくの/わたしのユートピア ワークショップ

研究背景

 私はアルバイト先の学習塾や大学の交友関係において、自分のキャリアに向き合う生徒・学生と関わり、若者が自分の将来について考える機会の創出に興味を持った。

 近年の日本の状況を見ると、小学校から高校までの教育機関では、それぞれに思い描く幸せを実現する「生きる力」を育む教育が目指される。また社会では「仕事は楽しいもの」という価値観や仕事を楽しむことを強要する、「エンジョイハラスメント(エンハラ)」が問題になっている。

 こうした状況より、学生のうちから他者の価値観を尊重しつつ、自分なりの将来像や働き方を考える必要があると考え、その機会となるワークショップの提案を目指した。

主なリサーチ内容

●「キャリア」「職業観・勤労観」などの語の定義と、それらについて考える意義の整理

●キャリア教育・キャリア支援の方針やその内容
・北海道札幌手稲高等学校と、札幌市立大学デザイン学部キャリア支援室でのヒアリング

●キャリア教育プログラムの実例
・村山昇「キャリア・ダイナミクス・ゲーム」について

 リサーチを通し、キャリアや職業観・勤労観は、職業としての仕事の場面だけではなく、家事やボランティアといった場面でも形成されていくものだと分かった。
 小学校から高校で実施されるキャリア教育では、生徒の社会的・職業的立に向け、基盤となる能力や態度を育てることに力が入れられ、発達段階に合わせた教育が目指されていた。大学のキャリア支援においても、それぞれの大学の特徴や専門性に合わせた取り組みが求められている。

 ヒアリングを行った札幌市立大学デザイン学部では、学生への「キャリア教育」と実際の就職活動に対する「キャリア支援」が段階的に行われ、一人一人の目標に合わせた支援も行われていた。しかし、現在のキャリア支援では1・2年生に向けた取り組みが少なく設計されていると分かり、高校までのキャリア探究と大学での取り組みのつながりを感じづらく、意欲的に将来を考えられない学生もいると考えた。そのため本研究で提案するワークショップは、将来について考える機会を作る必要性が高いと考えられる札幌市立大学の1・2年生をターゲットにすることに決めた。

ワークショップの概要

 ワークショップでは「自分の理想の暮らしを考えよう 」というテーマでグループワークを行う。このテーマは、学生に将来について考えてもらう上で、自然に仕事以外の要素を意識できるよう考えたものである。このテーマに取り組む中で、参加者が日頃から自分のキャリアを考える意識をつくると同時に、それぞれの今後の目標を明確化・具体化していく。

 この狙いを達成するため、ワークショップを3段階の構成にした。第一段階では、参加者が理想の暮らしについて考える中で、その時点での夢や目標と自分の考えに理解を深めてもらう。これをワークショップの中では、Web ホワイトボードの付箋機能を使い、自分の理想の暮らしの要素を整理したり他の人と共有したりすることで実践していく。また、付箋の内容についてグループディスカッションし、参加者同士で考えを深めてもらう。第二段階として第一段階で考えたことを文章でまとめ、考えを具体化する。また、文章と合わせて図などの表現で考えをまとめることも可能とする。第三段階では第二段階での制作物について口頭で発表してもらう。

 ワークショップの詳細と開催時のポイントはマニュアルとしてまとめた。

添付資料

展示風景の記録